行政へ提出する書類は、これまで書面(紙媒体)で行うことが一般的となっています。電子化の流れの中、政府は以前から電子申請での手続きを促してきましたが、特に社会保手続きでは利用率が向上しない状態が続いてきました。
そのため大企業では、2020年4月より一定の社会保険手続きについて電子申請で行うことが義務化されます。



 電子申請が義務となる大企業とは、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人ならびに相互会社、投資法人および特定目的会社に係る適用事業所です。義務となる時期は、対象企業の2020年4月1日以後に開始する事業年度からです。
なお、社会保険労務士または社会保険労務士法人が、大企業に代わって社会保険の手続きを行う場合も、同様に電子申請で行うことが義務となります。



 電子申請で行うことが可能な社会保険手続きは多数ありますが、今回義務化される手続きは以下のとおりです。

@厚⽣年⾦保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
・70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届
A健康保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・健康保険被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
B労働保険
・労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書
・⽯綿健康被害救済法⼀般拠出⾦申告書
C雇用保険
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者転勤届
・⾼年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請

これらの手続きを電子媒体(CDやDVD)で行っている企業もありますが、電子媒体での手続きも電子申請に切り換えることになります。



 電子申請の義務化は、行政手続きの簡素化が念頭にあり、事業主における手続きの簡素化も進められています。その一つとして昨年10月から雇用保険の継続給付(高年齢雇用継続給付金、育児休業給付金、介護休業給付金)における被保険者の署名・押印の省略が可能となりました。
これは、継続給付の申請を行うときに必要な、申請書への従業員の署名・押印を省略できるものです。署名・押印を省略するためには、従業員本人に、「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」により事業主が申請を行うことに同意することの確認を行い、その同意書を保存することになっています。
このような簡素化が今後も行われると想定されます。


自社で電子申請を行うためには、電子証明書の取得を行うことが必要であり、また、社内における社会保険手続き業務の流れも見直す必要が出てきます。書面での提出から、電子申請に切り換えるまでには一定の時間を要することが考えられますので、早めに検討を進めましょう。

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